現役信州大生が営む本屋さん「おんせんブックス」に行ってみた!

「本屋さんをやってみたいなぁ~」とぼんやり夢想するのは楽しいこと。

 

あんな本を並べたり、こんなイベントをしたり、お花を飾ったり、常連さんとお話をしたり……。

 

しかし、それを実際に形にして、継続していくことを現実的に考えた途端、しゅるしゅると夢の世界から引き戻されてしまいます。

 

そんなありふれたワナビーであるところの私が、「現役の信州大学生がやっている『おんせんブックス』という本屋さんがあるらしい」という噂を聞いたものだから、現役大学生!?しかも温泉…!?とずっと気になっていたのですが、先日ようやくそのお店に行ってきました!

 

場所は、長野県松本市浅間温泉。松本駅からバスで約20分、もよりのバス停から歩いて約15分のところにある「篶竹(すずたけ)荘」という下宿の一階部分にありました。

 

道中はこんな感じ。すぐそこには山々が。

 

こちらが篶竹(すずたけ)荘。戦前に建てられたというだけあって趣きがあります。

 

なんだか友だちの実家へ遊びに来たような気持ちに…おじゃましま~す!

 

ぬくもりのある空間で居心地がよい…しばらくここでお昼寝したい。

 

どんな本が並んでいるかというと…

 

本や本屋さん関係の本。本屋さんを始めるためにこれらを読んだそうです。

 

この拓本集というのは、「道祖神(どうそじん)」という、かつての村や集落の境界線に建てられた守り神の石像を集めた本。道祖神は日本の中でも特に長野県に多く、道端のあちこちにあってそれぞれ個性的な形をしています。

 

温泉地の本屋さんというわけで、こんな演出も。

 

看板を持つ越智さん

 

そしてこちらが店主の越智風花さん。事前にTwitterで連絡を取り、その日が営業日かどうかを確認したところ、松本駅からもよりのバス停までの行程を教えてくれたり、バス停まで迎えに来てくれたりと、とても親切にしていただきました!

 

店内を一通り拝見したところで、越智さんに話を聞いてみました。

 

―  越智さん、本屋さんをはじめたきっかけを教えてもらえますか?

 

越智さん 本屋さんを始めることは目標のひとつだったんですが、すぐに始められるとは思っていませんでした。でも、本に関するイベントに出向いたり、松本の古本屋さんをまわっているうちに、ひょっとしたらできるかも…?と思い始めて。

 

その時に自分の下宿先の一階を安く借りられることがわかったので、設備も必要最低限にしてとにかく始めてみようと。(現在はこの下宿からは引っ越しているそうです)

 

―  ちなみに、開店資金はどのくらいでしたか?

 

越智さん 全部で7万円で開店しました。この本棚は資材を1万円で買って友人と一緒につくりました。あとは電気工事ですね。それも大家さんが配線のことを教えてくれたり手伝ってくれて。それ以外の内装工事はほぼしていません。

 

―  なんと10万円もかからずに開店できたんですね!本はどうやって集めましたか?

 

越智さん まずは自分の手持ちの本と、知り合いが譲ってくれた本から始めました。いまも知り合いやお客さまに譲ってもらったり、あとはセドリしたりしながら集めています。

― おんせんブックスをはじめたことで何か変化はありましたか?

越智さん 本の活動を前より行えるようになりましたかね。松本にあるブックカフェの想雲堂さんと一緒に一箱古本市を企画したり、地元の私鉄の協力で「しましま本店」という、古い電車の車内で古本市をひらくことができました。

 

あと、ここは去年の4月にオープンしたのですが、その時にいくつかの地元メディアに取り上げてもらいました。その記事を読んだとある新刊の本屋さんから「うちで働かないか」というお誘いをもらって、いまはそちらでも働いています。

 

実店舗を構えたことで活動の幅が拡がったという越智さん。訥々とした語りのなかに、強い好奇心や行動力が垣間見えます。

 

さて、もう少し店内の写真を撮ろうかしら…と思ったら、ん…これはハンゴウ?

 

ハンゴウの中の本は、南陀楼綾繁さんの「町を歩いて本のなかへ」。

 

 

ていうか、久々にハンゴウの実物を見た!これは一体、と越智さんに尋ねたところ「3年までワンゲル部に入っていて…」と、長野県ならではのお答えが!しかもよくよく聞くと、毎年夏に日本アルプスを二週間縦走(山頂に立ったあと下山せずそのまま次の山へ向かうこと)するというかなり本気の部活に入部していたどころか、そこで部長を務めていたとのことだったのです。

 

華奢な見た目からは想像できないほどのアクティブさに驚くばかり…越智さん、底が知れない!

 

最後に、今後挑戦してみたいことを聞いてみました。

 

越智さん 石巻で「足湯読書」という足湯につかりながら本を読むイベントがあったのですが、それがとても気持ちよさそうで。このお店も温泉街にあるので「足湯ブックス」をやってみたいですね。実現に向けて、いま温泉街の方々とお話をすすめています。

 

思いついたことを周りの人に話し、巻き込み、次々と実現させていく越智さんの話を聞いていると、できることからやってみること、まず形にしてみることの大事さを感じました。
越智さん、どうもありがとうございました!


おんせんブックス
住所 松本市浅間温泉3-30-13(篶竹荘)
営業 不定期(facebookをご覧下さい)
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