8月16日(木)より京都京都河原町丸太町の新刊書店・誠光社で、WEBmagazine温度連載中のLEE KAN KYOさん「ジャケがいい」展が開催されます。会期スタートに先駆け、誠光社店主・堀部篤史さんとLEE KAN KYOさんの対談を公開します。LEEさん来日のきっかけに始まり、台湾出身のLEEさんの目に日本のカルチャーがどう映ったか、堀部さんがLEEさんの作品をどう見たか、などなどおふたりにお話しいただきました!
堀部篤史(以下、堀部) LEEさんはいま東京を拠点にしてるんですよね。台湾から東京に来るきっかけって何だったの?
LEE KAN KYO(以下、LEE) TKのことがめっちゃ好きで。
堀部 TKって、テツヤコムロ?
LEE そうです! 台湾ではむかしから日本の番組が放送されていて、中学生のときからずっと見てました。「TVチャンピオン」とか好きだった。あとモー娘。も好きで、メンバーを選んでる段階のときから追ってました。
堀部 「ASAYAN」?
LEE そうです。そのころの日本のテレビめっちゃおもしろかったです。
堀部 ぼくはあんまりリアルタイムじゃなかったですね。小室さんで言うと、TM NETWORKが流行ってたころに中学生だったのでそっちはリアルタイム。短冊シングルがあったころね。
LEE あ~ありましたね! あれはすごくおしゃれ! 台湾にも輸入されていたので買ってました。あれ持ってるのステイタスだった。
堀部 ステイタスだったんや(笑)!
LEE だってあんなの見たことないですよ! 南の島の人々は…。
堀部 あの短冊型のCDってアメリカにもないし、日本にしかないんですよね。
LEE 3曲しか入らないのもいい。自分が日本の文化にふれ始めたきっかけはその辺りですね。
堀部 形から入るんだね、短冊の8cmCDとか。LEEさんの作品って、物自体をみてるよね。
LEE そうですね、それはわたしのなかで重要です。形がだいじ。
堀部 その当時はまだしも、いまって台湾と日本の文化に大きな差はあるの? たとえばLEEさんは日本のポイントカードを描いてるけど、台湾にはないの?
LEE あるけど日本ほどみんな使ってないです。ポイントカードって発想がすごい日本人っぽい。台湾だと値切る交渉をするけど、日本人だとそれはしないじゃないですか。ポイントカードはお互い気をつかう文化ならではのものだと思ってて、日本らしくておもしろいです。
堀部 ぼくは一枚もポイントカード貯めたことない。
LEE えっ、それは気になります! いろんなお店で「ポイントカードありませんか?」って聞かれますよね? それいちいち断るのも根性いりそう…。
堀部 ポイントがつくってことを理由に、店を選ぶことが嫌なんです。得しているようで不自由にさせられているんですよね。
LEE きっとそういう考えの人は圧倒的に少ないですよね。
堀部 みんな得が好きっていうね。でも、得が好きっていう人に文化的な商売は出来ないですよね。ぼくみたいに個人店なんてやってたらなおさら。
LEE たしかに。そもそもの発想が逆ですね。
堀部 そう。みんなが得を目指したら、とことん合理的になるしかないでしょ。そうしたら個人の商店なんてある必要がないですよね。そういうことを真剣に考えたら、お酒なんてほんとうに得じゃない。栄養ないし(笑)。でもお酒とかコーヒーとか好きだし、それは損得ではないところの選択ですよね。
それにしても、ポイントカードを作品として描くっておもしろいですよね。
LEE そのシステムが良いか悪いかっていっさい関係なくて、ただこの現象がおもしろいと思っていて。「LEE POINT CARD」っていうわたしのポイントカードもあるんですよ。わたしの出るイベントにくるたびポイント貯まるっていうシステムを導入していて、会員はたくさんいます。カードがあることによって交流ができるので、それはおもしろいですね。
堀部 おもしろいね。LEEさんの作品は社会批判って気は全くなさそうだよね。
LEE まったくないです。
堀部 温度でやってる雑誌の表紙を描く連載も、選んでないからいいわけですよね。その雑誌が好きとかそういうことではなく、淡々としてるのがおもしろい。
LEE ありがとうございます。
堀部 客観性がつよい方が見えてくるものってあるから。そういうものを作品から感じます。
LEE 毎日インスタグラムで野菜ジュースを飲んでる自撮りをあげてて、
「野菜ジュース好きですか?」って聞かれますが全然。味が好きとかそういうんじゃないんです。
堀部 そうなんやね。
LEE 逆説的なやり方が好きで、ポイント貯めるためにお金使うみたいな現象とか。インスタグラムにアップロードするために野菜ジュース飲むんですよ。逆のやり方をするのが好きなんです。
堀部 多くの人たちは意味を感じてやってるから、あれを見るとジュースを好きだと思うわけですよね。
LEE 作品つくるのがただ好きでやってるんですよ。意味とかメッセージって、奥の部分にはあってそれを少しでも伝えたいけれど、でもそれは二の次。
堀部 そのメッセージっていうのは、ぼくはこれが好きとかきらいとか、批判とかじゃなくて、その現象自体が変わったものだなっていう目線とかなんですよね。
小説にせよ、絵にせよ、表現はなんでもそうだと思うけど、著者が言いたいことを登場人物に言わせるって割と簡単っていうか、言っちゃうと二流ですよね。台詞で全部説明しちゃわない方がより文学的ですよね。
LEE そう言ってもらえてうれしい!
堀部 展示と作品集も楽しみにしています。
LEE KAN KYO『ジャケがいい』展
場所:誠光社
開催日:2018年8月16日(木)ー 2018年8月31日(金)
URL:http://www.seikosha-books.com/event/3734
※ 展示に合わせ、A6サイズの小型作品集も販売予定です!