【おまけ】「3人でよってたかって本をすすめる会。」の記録 出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと 番外編

イベント「3人でよってたかって本をすすめる会。」の記録(一部抜粋)

花田さんが祖父のお通夜を欠席し初主催した、喫茶へそまがりでの「3人でよってたかって本をすすめる会。」。こちらのイベントの様子を、抜粋してお届けいたします。その名のとおり、よってたかって本をすすめまくっているので、いろんな本が出てきます!(このレポートだけでも全部で22冊!)
 ※であすす7話はこちら
紹介者:花田 菜々子(以下、花)
Tweed Books  細川 克己(以下、T)
ソントン 中出 憲吾(以下、ソ)

「恋とはなんですか?」

ゲスト  ゆうかさん(仮名・以下、ゆ) 19歳・大学生・女性
花 こんな本が読みたい、というのありますか?
ゆ あのー……恋とはなんですか?
一同 おおーっ
T 三島由紀夫の『潮騒』なんてどうですか?
ゆ あっ、もう読みましたね…。
花 普段はどういう本を読んでるんですか?
ゆ 何だろう…でも三島由紀夫とかは好きかも。
この前授業で尾崎翠の『第七官界彷徨』について話し合いをして。それで恋が何なのかということが引っかかって。先生が「ここに出てくる人たちは恋に恋している人たちの話だ」と言っていて。
花 ご自身の状況になぞらえての悩みでしょうか?
ゆ はい。めちゃくちゃ好きな人がいるんですけど。
その人AさんはBさんを好きで、Bさんは別に付き合ってる人がいたわけです。だから私いけるかも、と思ってたのですが、Bさんは彼氏と別れてAさんと付き合うと。そして私はAさんとBさんの恋愛を応援する?ということになったのですが結局BさんはAさんを振って前の彼とヨリを戻すことになり、Aさんは精神的に病んでしまって。
店主(乱入) 報われなくて悲しい、って話だよね?
『愛と悔恨のカーニバル』って本があって。好きな男がいるんだけどその人は姉とただならぬ関係で、でも犯罪を起こして逃避行するんですよ。それでエレベーターの中で「なんてこと、翼は私を愛してない」って気づくんだけど愛した男だからとことんまでついて行こうと覚悟する。
ソ それ面白そうですね。
花 栗田有起さんの『お縫い子テルミー』おすすめしたいです。
最高の片想い小説だと思います。オカマのシンガーに叶わぬ恋をするんですが、その人をモノにしよう、じゃなくて、その人に恥じない自分で生きよう、って自分が自立することにつながっていく。その人が美しく生きていることが自分の生きる支えになってる、みたいなそういう話で。
ゆ 読みます!
ソ 僕からは、男ゴコロがわかるような本を紹介したいなあと。森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』とか村上龍の『69』とか東野圭吾の『あの頃ぼくらはアホでした』とか読むと、男も女のことがわからなくてぐちゃぐちゃ悩んでいるのがわかると思います。
花 片想いといえば西加奈子の『白いしるし』もいいんだよなあ。
手の届かない人を好きになって夢中になって、失恋した瞬間に真っ白になってしまう、みたいな。叶わない恋っていうのはこういうものだなというのをすごくリアルに描いていると思います。それから最近読んだ椰月美智子の『伶也と』も実らぬ恋を一生貫く話でよかったです。これもひとつの理想の愛なのかなと感じました。
T 僕は、さっきのゆうかさんの話をきいてプラトンの『饗宴』がいいんじゃないかなあと。これ、恋とか愛とかがしつこいくらいに書いてあって。プラトニックラブのプラトニックも、プラトンから来てるんですよ。
ゆ ああ~恋と愛。私のイメージとして、愛は到達するもの、恋は性欲を満たすためのもので常にこの二つは闘っているというか。
ソ 今はどっち寄り?
ゆ 性欲(笑)
 まあ、でもいろんな気持ちがほんとの気持ち(Ⓒ長嶋有)だし。
T 愛ってなんなんでしょうね……(遠い目)

「私をイメージした1冊をすすめてください。」

ゲスト  あさこさん(仮名・以下、あ) 22歳・会社員・女性
あ せっかくのこういう機会なのでパッと見の印象で「これ読んだら?」っていうのを聞きたいです。
一同 それ自分も聞きたい!やってもらいたい!
あ 自分がどう見えてるのか本を読んで知るのもいいかなって。
花 本はよく読む?最近読んだ本でも、今までで特に印象に残ってる本でも、ちょっと聞いてもいいですか?
あ 有川浩の『植物図鑑』すごいよかったです。それから最近は夏目漱石の『こころ』を読んで面白かったです。オタクなんで西尾維新とかも好きです。
T 僕の第一印象は小川洋子。
ソ すごいわかる!
あ けっこう薄暗いのも好きです。小川洋子、何がおすすめですか?
花 最初に読むなら『博士の愛した数式』とか『猫を抱いて象と泳ぐ』とか、そのあたりがいいんじゃないかなあ。
私は武田百合子とかいいかなあ、と思った。あと、サガンとか。武田百合子だったら『富士日記』から、サガンはまず『悲しみよ こんにちは』からでしょうか。『悲しみよ こんにちは』には思春期特有のクールさだったり残酷さみたいなものがあって、日本の小説にはないような雰囲気を味わえると思う。
ソ カフェで、この雰囲気でサガン読んでたらモテますよ。
花 うん、モテる(笑)!でもそれ言ったら、さっきのプラトンはカフェで読んでたらモテなくなる。
T プラトンでも神保町とかだったらモテるかも?……いや、だめだな、むしろ面倒くさいおじさんに目をつけられて「今度輪読会やるんだけどどう?」とか言われちゃう。
ソ 漫画ですけど、谷川史子とかどうですか?短篇が多いんですが、どれも大人向けで、さわやかだけどきれいごとじゃない恋愛を描いてると思います。特に個人的におすすめなのは『積極』かな。僕が短歌を好きになるきっかけにもなった作品です。カフェで読んでても、うーん…モテると思います。
あ はい、モテるように、がんばっていろいろ読んでみます(笑)

「読む本が偏ってマンネリ化しています」

ゲスト  みのりさん(仮名・以下、み) 24歳・女性
み 人に勧められて読むってことがあんまりなくて。太宰治、町田康、西村賢太とかが好きでのめり込んで読みましたが、最近はのめり込めるような作家もいません。新しく読むのも松沢呉一とか、筒井康隆とか、似たようなのばっかりになってしまって。
T なるほど。じゃあ舞城王太郎なんてどうでしょう。
み ああ…好きです。
花 もう知ってましたか。じゃあ海外文芸はどうでしょうか?ケッチャムという人がおりまして『隣の家の少女』という本があるんですが……。
み あ、すみません、それももう読んでます。
T うーん、じゃあブコウスキーなんてどうですか?
み 手に取ったことはあるんですが、あの翻訳のかんじがちょっと苦手というか。
花 鈴木いづみとか。
み 好きですね。
花 漫画ですけど、史群アル仙とか。
み 好きです。
花 うーん…あれはどうだろう、車谷長吉の『赤目四十八瀧心中未遂』。
み 好きです。
花 うーんうーん……ちょっと今、探します。
T 吉田知子って知ってます?
み いや、それは知らないです。
ソ お好きかもしれないです。最近関西の小さい出版社から全集が出たんですよ。
T 町田康が最後に解説というか、作品に対しての「問い」を書いていて。
み なるほど。あの、そうですね、自分の気に入りそうなものというより、まったく新しいものを勧めてもらうほうがいいのかもしれません。国内のSFとか、まったく知らない世界なのでそういうのがいいのかなと思って読み始めてるんです。リリカルSFというのか、叙情的なものなら面白く読めるな、という感じです。
ソ 野崎まどっていう、ラノベ出身の作家がいるんですが、『2』っていう作品がいいです。最高の映画って何なのか、という定義に向かって挑戦していくはちゃめちゃな作品です。
花 私は、SFってほどではないんですが、叙情的…というワードから思いついたのがカズオ・イシグロです。
み 名前はきいたことありますが読んだことないです。
花 やった(笑)!ぜひ『わたしを離さないで』を。全寮制の学校にいる子どもたちの生活が描かれるのですが、どことなく不穏さを感じさせるもので。ミステリーのような「ネタバレ禁止」的な性格を持ちつつ、最後まで読んだときに考えさせられるというか、深く感動が残るような作品です。
T 広瀬正はどうですか?
み 知らないです。
T ショート・ショートで読みやすいし、これからSFをってことでしたらおすすめですよ。
ソ あとは大森望っていう人が監修している短編集で『NOVA』っていう文庫が10くらいまで出てるんですが、よい作家さんがたくさん参加してるのでその中からまたお気に入りの作家を見つけてもいいかもしれないです。
み ああ、広がりそうですね。ぜひ読んでみます。ありがとうございます。
(おまけ終わり)
※次回、であすすがついに最終回!11/25(土)更新予定です!