2018年も残りわずか。WEBmagazine温度の年末短期集中企画として、気になる方々に「2018年のあなたをあらわす一冊」を聞いてみました。トップバッターは、来年結成10周年を迎える劇団「ロロ」の俳優・森本華さんです。
NTVドラマ「獣になれない私たち」の第5話に、も~~~うどうにも辛いという夜に主人公が携帯の連絡帳を開くシーンがある。“ア”から順にズラーと並ぶ知り合いの名前を何度もスクロールするものの、こんな時誰に連絡するのがベストなのかわからない、というシーン。
結構元気がないんだけど、励まして欲しいわけではないような、愚痴もそんなに言いたくないような、恋人になぐさめられたり説教されるのだけは勘弁だし、でも誰かに会わないとこれはやばいぞ、みたいな一日の終わりがある。こんな日は誰かと、できれば相手がたくさん話してくれて「なんじゃそりゃ」くらいのノーストレスな相槌で一杯くらい飲んで帰れたらいいのにな、と思う。ああ、誰かに会いたいな。と思ってる一方で、誰でも良いわけじゃない。オイオイなんて傲慢なんだお前は…!!なんつう余計な思考が働いてしまって、結局誰にも連絡できず固まる夜…ある、ありますガッキー。
ドラマを見て共感したと言うのはあまりにも野暮なんだけど、あの連絡帳のシーンだけは実にあるあると思ってしまい、2018年自分に何があったかと考えるとそんなことが多い一年だったなと思う。
恥ずかしながら今年は仕事があまりなくて、冷静になってしまうことの多い年だった。特に何かあったわけじゃないけどそんなに元気がなくて、なんとなく本屋に入ってさくっと漫画を買って帰る日が続いていた。でもたまに「帰るか…」というタイミングで「おーい」と誘いの連絡が入ることがあった。「よっ」とたまたま見つけてもらえたこともあったし、迷子の外国人に「スシ(屋はどこですか?)」と話しかけられたり、ギリギリのところで笑顔になれる日があって、そんな日は誰かとタイミングが合ったことがまず嬉しくて、一気に無敵な気持ちになれた。こんな最高の夜があれば全然大丈夫だぜ~! と思える日をすごく大切にできる一年だったと思う。
特に外国人の女の子(二人組)を寿司屋に連れて行くときは楽しかった。言葉は10年以上前の中学英語でなんとかせねばならず、とにかく演劇で培った(?)オーバーな手振り身振りと、ひょうきんな表情でごまかしごまかし会話をして、なんとか寿司屋の前に着いたとき、「su~~shi~~!thank you~~!」と寿司ネタがずらっと並んだ看板を前に目が輝きまくっていた二人を見て、すっかり私は元気になっていた。というか10分くらいの大げさなコミュニケーションで気持ちが完全に大きくなっていて「エンジョーーイ!」と最後はかなりの大声でぶんぶん手を振っていた。
『完璧じゃない、あたしたち』は、もうだめかもという状況が一気に好転する出会いの瞬間がつまってます。しかもどの作品も女性のスーパーヒーローが女性っていう、女は必ず元気がもらえる短編集です。私の2018年をあらわすなんて言うにはもう本当おこがましい完璧な一冊なんですけど、今年一番震えるほど元気が出た作品だったので選びました。
2018年の森本華さん(劇団「ロロ」)をあらわす一冊:王谷晶『完璧じゃない、あたしたち』
森本華/俳優。劇団 ロロ所属。ロロには立ち上げより出演、2010年正式加入。
ロロ|LOLO/劇作家・演出家の三浦直之が主宰を務める劇団。2009年結成。古今東西のポップカルチャーをサンプリングしながら既存の関係性から外れた異質な存在のボーイ・ミーツ・ガール=出会いを描き続ける作品が老若男女から支持されている。
ロロ officialweb → http://loloweb.jp